農園だよりDiary

2016年10

2016.10.20
 皆さん今日は。

 相次ぐ台風の襲来で曇天続きの中、何とか稲刈りも終わり今年も皆様に新米をお届けすることが出来ました。夏の猛暑の中での作業など大変な年でしたが良い品質の米が出来たのではないかと思っています。どうぞご賞味ください。

 そんな中、関東を中心に有機農産物、生活資材の宅配事業を展開し、我が社の「有機JAS合鴨米」をお取引頂いています「大地を守る会」のツアーで9月7日から15日までキューバのハバナに行ってきました。

 キューバは昨年アメリカとの国交を回復し、今年、現職大統領として88年ぶりにオバマ大統領がキューバを訪問して歴史的変革が始まり、世界から注目されている国です。キューバ革命以降、社会主義国としてソビエト連邦の支援を受け歩んできましたが、1991年ソ連崩壊後は食料、化学肥料、農薬の支援も止まり、有機農業でしか食料生産の道がなくなり、現在では有名な有機農業国家として知られています。日本の農民が化学肥料も農薬も十分にあるのに、あえて使わないで有機農業を行っているのとは大変な違いで、キューバ農民の苦労を知るのもツアーの目的です。

 視察研修はお役所を通じて許可を頂いた日程で進められました。試験場や公的機関で説明を受けましたが、要約すると「適地適作、適期栽培」「作りにくい場所や時期には作らない」です。日本では人が作らない時に作らないと金にならないのとは随分違います。社会主義国なので配給や補償金が有り生活には困らないとの事でしたが、街中には自由市場が有り、病院や学校に出荷した残りは自由に販売しても良いことになっているのだそうです。またニンニク、玉ねぎは輸出の需要が有り農家の収入は医者の給料の2倍だそうです。適地適作のルールは有りますが、適地でなくても栽培したいと言う欲望は有るそうです。社会主義国のこの国にも資本主義が着実に浸透しているようです。

 視察では2か所の農場を見学しました。畑を見ると周りにはトウモロコシやマリーゴールド、ひまわりが植えられています。日本でも「バンカー植物」と言われて天敵昆虫が集まって害虫を駆除する効果が有りますが、上右写真のトウモロコシには沢山のアブラムシが寄生してそれを狙ってテントウムシやその幼虫が群がっていました。

 また肥料は牛糞を「カリフォルニア赤ミミズ」に食べさせてそのミミズの糞を畑に施すのだそうです。女性が手にしているのは日本でも防虫剤として使われている「ニーム」の実です。後ろにある緑の葉はニームの並木の枝を整理して落としたものです。この国は亜熱帯性気候で太陽光線が強く正に自然豊かな楽園ですが、雨季にはスコールで畑の土が流されたり、暖かい気候で害虫が沢山発生したり大変な面もあるでしょう。反面、天敵昆虫が沢山いたり日本では高価なニームが街路樹だったり、この国だからこそ有機農業が成り立ったんだなと感じました。お役所の作った行程以外にも農家の視察をしました。家の周りにはバナナやマンゴー、パパイヤ等色んな果物が実り、豚、鶏、牛などの家畜、広い畑、芝生、そして大家族がのんびり生活している様子が伺えました。日本での自身の生活を振り返ると正に理想郷です。

 キューバは400年間のスペインの植民地時代~キューバ革命までの間、砂糖産業、奴隷産業、葉巻産業で栄え、首都ハバナには今も当時の街並みが残され、人々の生活の場として利用されています。

 ハバナの旧市街地は1950年代以前に建てられた豪華な装飾のビルが立ち並び、通りはクラシックカーが当り前のように走り回っています。住宅地は芝生の庭付き一戸建て、鉄筋コンクリート製の瀟洒な住宅が建ち、街路樹としてヤシの木やガジュマルの並木が整備され南国ムードたっぷりです。キューバは革命後、アメリカからの経済封鎖を受け、外貨獲得のため観光に力を注いでいます。クラシックカーはタクシーとして利用され、また通りは外国からの観光客でいっぱいです。キューバの人はヨーロッパ系とアフリカ系で構成されていますが、観光客には親切に接してくれるし、治安も良いと聞いていました。実際旧市街地や買い物の自由行動時間、一人で歩きましたが「ハポネ(スペイン語で日本人の意)」と片言で話しても何の問題も有りませんでした。

 旅の楽しみの一つは食事です。今回のツアーは食事もセットされていたのでメニューを見て選ぶ事は有りませんでしたが何でも好物の私にはどれも美味しい物ばかりでした。一週間も生活すると料理の特徴が大体分かってきます。①パサパサの白ごはんに小豆の様な木になる豆の塩煮をかけて鶏肉か白身の魚を添えて食べる②パサパサの黒米に鶏肉か白身の魚を添えて食べる。この二通りが基本形の様でしたが、きつい香辛料もなく食べやすくて美味しい料理でした。それから何と言っても南国の果物が美味しいです。特にマンゴーは甘くて、マンゴージュースは濃厚で絶品でした。

 またこの国ではレストランで食事すると専属のバンドがラテン音楽のサービスをしてくれます。

 この店はヘミングウエイが通ったことで有名な「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」で、テーブルに来て五、六曲歌ってくれます。CDの販売も有ります。写真右はドキュメンタリーフィルムがアカデミー賞にノミネートされた「ブエノ・ビスタ・ソシアル・クラブ」です。2時間の素晴らしいラテン音楽のショータイム、出演者それぞれが一流のアーティストです。演奏に聞き入っていると、そのうちに専属ダンサーに誘われてダンスが始まります。そのダンスの渦がだんだん大きくなり私達もその渦に飲み込まれました。会場が熱気に包まれ、汗だくになって踊り、ショーはアッと言う間に終わりました。残ったのはラテン音楽の軽快なリズムの余韻と汗まみれのTシャツでした。楽しかった!

 今回のキューバツアーでは沢山のキューバの人に会いました。ラテンのそして南国の風土の中でみんな陽気で楽天的でした。しかしこの国は長い植民地の時代、奴隷市場、流血の革命等暗い歴史も抱えています。それなのにこの明るさは何なんだろう。太陽の明るさのせいなのか、疑問は尽きません。

 旅行は日々の生活から解放されて非日常を体験するのが楽しみです。今回は9名のツアーでした。大地を守る会の役職員5名、生産者3名、もう一人は女優の木内みどりさんです。テレビ、映画でしかお目に掛かれない方と旅行をご一緒させて頂いて非日常な時を楽しませて頂きました。ありがとうキューバ!
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