農園だよりDiary

2021年2

2021.02.09
 皆さんこんにちは。

 立春も過ぎ、日差しにも春の訪れを感じるようになりました。
先月号でもお知らせしましたが、熊本県では「くまもとグリーン農業」を推進しています。阿蘇や球磨、人吉などの山間部に降った雨は地下に蓄えられ、豊かな地下水は175万県民の8割の生活用水を賄っています。本県は有明海に面した干拓地から山間部に至る色々な条件の下で色々な形の農業が営まれ、農業が基幹産業です。農地にはこれまで作物を栽培する為に沢山の化学肥料や農薬が撒かれてきました。ある地域では地下にしみ込んだ肥料成分が地下水を汚染し飲料不適になったところも有ります。そこで県では「地下水の水質や量を保全し、地力増進のため土づくりとともに化学的に合成された肥料、農薬を減らした農業の取り組み」を推奨しています。
 
 今回、弊社の取り組みが認められたのか表彰されることになり、1月14日表彰式が行われました。例年なら沢山の人が集まり、表彰式と祝賀会が盛大に催されるのですが、今年はコロナ下、ごく少人数、副知事の祝辞、表彰状授与、記念撮影。30分で終了しました。もちろん阿蘇に帰ってメンバー3夫婦で祝杯を上げました。

 弊社は有吉佐和子の小説「複合汚染」に触発された農業青年のグループが源流です。私は少し下の世代で稲作農家の後を継ぎ、ビニールハウスで夏はトマト、冬はイチゴ栽培に取り組み、試行錯誤の中で化学肥料、農薬、土壌消毒剤、除草剤を沢山使い苦悩の農業に陥っていました。平成3年、そのグループが合鴨農法に挑戦するとき、私もメンバーに加えて頂き10人のメンバーでスタートしました。平成5年「農事組合法人 あそ有機生産組合」設立、平成9年「有限会社 あそ有機農園」に改組しましたが、諸々の事情でメンバーが欠けていき現在3人になってしまいました。田んぼの状況も取組の初めの頃は惨憺たるものでした。合鴨は他の雑草は全て退治してくれますが稲と見かけが同じヒエには無力です。取りきれずに残ったヒエは実を付け、落ちた種の一粒は翌年、また数百粒の実を付け、発芽して一面ヒエの田んぼ。もはや合鴨達はそこを避けて通るようになり、最終的には人の手での草取りになります。合鴨農法のはずだったのが人間農法になってしまいました。除草剤を使っていた時も苦悩の農業でしたが合鴨農法はそれ以上の苦悩の農業でした。それでも皆様や仲間の助けを借りながら30年。年ごとに作業の段取りや栽培技術も良くなり、以前は合鴨の田んぼは草茫々と言われてきましたが最近では慣行栽培の方が茫々になっています。私達にはお届けする皆さんの顔が思い浮かび、栽培にやりがいを持ち日々の田んぼの見回りは欠かしません。これからも水と土を大切にし、加えて脱炭素時代に合ったCO2を沢山排出して作られた化学肥料、農薬を使わないアナログな米づくりに励んでまいります。

 それから、我が家では私が60歳になった3年前、息子にトマトとイチゴのハウス経営を譲りました。稲作の場合の無農薬栽培は主に雑草との戦いですが、ハウス栽培での最大の敵は害虫です。最近は、虫にも人にも良く効く「有機リン系殺虫剤」に代り、「ネオニコチノイド系殺虫剤」が多用されるようになりました。各地で報告される、ミツバチが突然いなくなった現象の主犯と目されているこの薬は、虫の脳神経回路を阻害して殺すので人には安全と言われています。しかし最近では人の脳細胞にも、また胎盤を通過して胎児の脳にも影響を及ばすと言う研究者もいます。私は40年間トマトを作り、農薬の役割を十分解っていますが、それに代わる方法があることも感じていました。3年前専用ハウスを建て、土づくり、天敵昆虫を使い化学的に合成された肥料、農薬を使わずにトマトを栽培する事に取り組み、昨年「有機JAS」認証を取得しました。今後は更に研究を続け、この知見を多くの農家に広げ、真の「グリーン農業」になるよう努めてまいります。
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