農園だよりDiary

2022年12

2022.12.05
 皆さん今日は。

 ついこの間まであんなに暑い日が続いて、地球温暖化のせいで今年は本当に冬が来るのかな。などと思っていたのに、本当に冬がやって来ました。南国九州の阿蘇で12月1日、阿蘇山が初冠雪。山頂が真っ白に輝いています。自然界の摂理は不動ですね。我が家では真夏も窓を開けて殆どエアコン不使用、秋は当然使いません。今年の燃料高騰ではなおさらです。暑さはタオルで拭き拭き我慢が出来ますが、寒さは厚着だけでは乗り切れなくて暖房を入れざるを得ません。子供の頃、隙間風の部屋のなかで「掘りコタツ」に家族みんなで肩を寄せ合い、暖を取りましたが燃料は自家製「籾殻燻炭」と「炭」。本当につつましい生活でした。しかし家族みんな顔を合わせ、体も心もポカポカだった思い出があります。この高騰の難儀な時代から比べると貧しかったけど豊かな時代だったように思います。

 燃料高騰も響きますが、飼料の値上がりも大変です。我が家の合鴨達は田んぼの仕事が済むと肥育ハウスに移動して毎日沢山の餌を食べ、のんびり過ごし、最後は肉になります。餌は昨年のくず米ですが、それがなくなると購入飼料を食べさせます。毎年値上がりし、3年前の2倍の価格になっています。大変な事ですが我が家では肉になる前の短期間なので我慢できる範囲です。大変なのは牛や豚、鶏を沢山飼育している畜産農家です。沢山の家畜が毎日毎日たくさん食べます。食べないと大きくならない、卵を産まない。それでは商売にならないので十分に食べるだけ食べさせたいけど、食べさせると餌代がかさんで経営が成立たない。乳牛の雄の子牛は肉牛専門の農家が買い取り育てますが、経営が成立たなくなるので、皆が飼育頭数を減らし、以前は1頭2万円していたのがダブつき千円しかしないのだそうです。そうすると再来年頃、国産牛肉がスーパーから無くなり、値上がりします。阿蘇では田んぼの4割で飼料稲が栽培されていますが、畜産農家の牛の数が少なくなることは牛の食べる量も少なくなることですから飼料稲が余り、地域の農業体系が壊れ田んぼが荒れます。田んぼが荒れると用水路管理が滞ったり、害虫が増えそれが我が家の田んぼに飛来し、収量が少なくなる事もあるかもしれません。「風が吹けば桶屋がもうかる方程式」です。生産者も消費者も損な事ばかりですね。

 11月末、NHKテレビで「フードショック」と題して世界の穀物の流れや日本の食料事情についての番組が放送されました。豊かになった日本は工業製品を輸出し儲けたお金で世界中から食料を輸入しました。貿易自由化、安定した国際情勢の中、食料は安いのだから海外から買えば良いという驕りでしょうか。ところが「失われた30年」。今「円」の輝きは色あせ、戦争、自国民の為の輸出禁止、中国の台頭で日本は食料輸入も苦戦し、中国に買い負けの状態なのだそうです。更に世界人口80億人。益々食料輸入は難しくなるようです。飼料高の影響を直接受けている私たちの今の状況の原因を分かりやすく説明してくれる番組でした。

 国会ではミサイル購入、防衛力強化GDP2%が審議されています。大事な事でしょうけど食料備蓄と言いながら3か月分しかない米備蓄。皆が大好きなパンの為の小麦も2か月分。ミサイルは沢山有っても戦争だけでなく、自然災害、世界経済の変化、日本経済の衰退。色んな事態が想定されます。工業国になった日本では工業製品のように機械をフル活動すると食料がフル生産できると言う錯覚が世の中に蔓延しているようです。命の源は太陽の光を十分に浴び、時間をかけてじっくりと育った作物を摂る事で満たされます。日本では農業の重要性に対する理解度が低いようですが、皆が「やはり農業は大事だったんだ」と分かった時、それは沢山の人が飢えの苦しみを体験したときでしょう。せめて子供にはそういう思いをさせてはいけませんね。
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