農園だよりDiary

2023年6

2023.06.07
 皆さん今日は。

 5月下旬、巨大な台風2号の発生で梅雨前線が刺激され、今年は異例の早さで梅雨入りとなりました。それまでの天候が安定していたので田植えの準備から植え付け、その後の生育も順調に経過していましたが、合鴨ちゃんを田んぼに入れる前の準備の網張が連日、合羽を着ての作業で大変でした。それでも6月3日から晴天になり2日をかけてヒナ達を田んぼに放すことが出来ました。初日にはヒナ達を箱に入れ田んぼに着くと隣の田んぼでは飼料稲の田植えで家族、親族、友人沢山の人だかり。みんな顔見知りの人ばかり。ちょうど田植え機を運転している人の孫ちゃんが応援に来ていたので、すかさずスカウトしてヒナ達を放すのを手伝ってもらいました。ヒナ達は先月10日、我が家に来たときにはあんなに小さかったのにもう何倍かの大きさに成長しました。脅威の成長力です。しかし家の中で育ったので太陽の光は初めて。急に狭い箱に入れられ、軽トラックの荷台の振動にびっくり。かと思ったら広い田んぼに出されることになりました。スカウトされた坊やも合鴨のヒナを触るのは初めて。お母さんに手伝ってもらい、ヒナ達を新天地へ。みんな初体験のおっかなびっくりの中で無事ヒナたちは田んぼの中に泳いで行きました。

 日本の原風景に田んぼは欠かせないものです。田植えの時期の水が張られた田んぼに映る山や月。実りの秋の稲穂の波。日本人には欠かせない心の風景ですが日本が稲作農業の土地だから見る事の出来る風景なのです。パン食文化圏の農地は水はけが良く、涼しい気候で小麦がよく育つ環境にあります。しかし乾いた畑の土は土壌微生物が活発に活動して土の中の有機物を分解してしまいます。毎年小麦を作り続けると農地が痩せてくるので大麦と1年毎に作るとか、2年作ったら1年休むとか、夏に大豆、それを収穫した後に小麦を植えるとか色んな手立てをその地域ごとに工夫しながら栽培が続けられています。それでも一番大切な豊かな土の層が薄くなっていると言われています。日本の田んぼはどうでしょう。日本では特に都市近郊の農地は住宅地や商業施設、工業用地になり、面積は減少していますが毎年作り続けているのに田んぼの土層が薄くなるようなことはありません。春先になると西風に乗って黄砂が中国から飛来してきます。黄河流域は豊かな農地が広がる所ですが乾燥と強風により農地の大切な土は吹き飛ばされてしまいます。日本の田んぼは水が入れられ田植え前には「代掻き作業」により土と水が練り合され土は沈殿し、適度に固まり大雨が降っても土が田んぼから流れ出る事はありません。水を貯えながら土も守る。「田んぼダム」と言われる所以です。また水分が多いので微生物の活動が適度に抑えられ、土と混ぜられた前の年の根や茎葉がゆっくり分解することにより土が痩せることなく毎年、栽培が続けられます。古代の人はすごい事を発明したものです。感謝感謝。

 そんな有り難い作物なのですが阿蘇でも山沿いの形が真四角でないとか、手間が掛かるとか、そういう田んぼが放棄されイノシシが闊歩する場所になっています。そこで繁殖したイノシシがそこら辺りを荒らしまわり、それでなくてもみんな米つくりに意欲を無くしているのに、ますます農家が作るのをやめる田んぼが広がり、負の連鎖です。山間の大雨の時に土が流れ出すのを食い止めるべき場所が放置され田んぼダムが機能しなくなっているのは阿蘇だけではないでしょう。山、川、田んぼ、海は繋がっています。そのどこかで私たちは生活しているのですが、なかなか自分の生活圏以外の事には関心がありませんね。

 日本の農業が衰退し、中でも手間の掛かる有機農業は高齢農家ばかりになりつつあります。そんな中で皆様から作物を買い支えて頂いているお陰で、弊社の農地が、日本の農地が守られ、日本の国土が守られることに繋がります。有り難い事です。
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