農園だよりDiary

2024年5

2024.05.08
 皆さん今日は。

 今年の春、阿蘇は天候不順により曇天の暗い雰囲気でしたが、5月になり初夏の明るい清々しい装いになりました。ゴールデンウィーク真只中、「子供の日」の今朝、会報の写真を撮りに大観峰まで行ってきました。明日が雨の予報で風が強く、阿蘇山には雲が懸かっていましたが草原の若草を撮ることが出来ました。まだ8時というのに駐車場には沢山の車が止まっているようで、コロナが終息し庶民の移動が元に戻った証でしょう。

 阿蘇では今、田植えのシーズンです。兼業農家では連休の内に済まそうと苗運び、苗の装てん、田植え機の運転、空になった苗箱の片付け、家族総出で作業がされます。大切な年中行事、役割分担も自然とされているようで家族の絆の確認の一日なのでしょう。我が家の田植えは5月12~15日を予定にしているので現在、畔の草刈りや水を溜めて土と混ぜ合わせる代掻き作業を行っています。忙しいこの時期、軽トラックやトラクターで移動をするのですが国道は渋滞するのでなるべく通らないようにしています。ところが、最近は観光客らしき乗用車が農道を行きかうようになり、また見通しの悪い通りで突然大型バイクと遭遇して冷や汗を流し、農家の専用道路も農業の衰退とともに優先権を奪われてしまったようです。

 「2024年問題」。トラック運転手の長時間運転の解消と待遇改善の為に法改正が行われました。運転手は連続運転が規制されます。これまで阿蘇から東京までトマトを運ぶのに朝収穫して箱詰め、午後にトラックに積込み出発、翌々日の朝のセリに間に合わせていました。ところが改正後、運転手は連続運転が出来ないので休憩をするか、又はフェリーに乗り1日多く費やして東京到着になります。全国の物流に影響が出ているようです。我が家でも田んぼの肥料を注文したら、関東からの取り寄せなのでトラック便の都合がつかなくて配達が遅れますと言われました。テレビの時事問題を扱う番組では、東京のスーパーの現状が紹介されていました。これまでは朝の始業時には店内全陳列棚に空きがないよう商品を補充していたのが、現在は商品が到着するまで空けておくのだそうです。お客さんにそのことについてインタビューすると、「自分がいつも買っている商品が欠品だとムカッとする」という答え。折角買いに行ったのに目当ての商品がないとがっかりしますよね。しかしトラック運転手はこれまで仕事とはいえ、あの大きなトラックの荷台に積み込み、長距離を時間に間に合うように運転し、到着したら荷下ろし。大変な重労働に支えられて私たちの便利な生活が成り立っていることを思うと欠品も仕方ない事です。若い世代では大手の通販会社の商品を現物ではなくて携帯電話の画面を見て選んで注文し、運送会社が自宅まで届けてくれるのが当り前になりました。最近のテレビコマーシャルで都会のコンビニでは「僅かな金額の商品でも配達します」というのが流れていましたが労働生産性の低いサービスですね。通販会社のコマーシャルでは「送料無料」が宣伝文句でした。誰かが大変な苦労をして商品を配達しているのに無料というのは不思議な話です。本当は送料負担をしているのは購買者です。ちなみに弊社では沢山買って頂く方からは少し、少ない方からは多くの送料の一部負担を頂き、残りは売価で賄っています。世の中、タダの物はありません。

 京都の龍安寺を訪ねた時、「吾唯足知」の蹲を見ました。庫裡には「韋駄天」が祀ってありました。韋駄天は仏法の神様で足が速い事の例えにも使われます。ガイドさんの説明によると、「御馳走」とは人をもてなす為に身の周りにある物を走り回って集めて料理を作った事に由来する言葉で、足の速い韋駄天は、より広範囲から食材を集める事が出来たので厨房である庫裡に祀ってあるとの事。現代の韋駄天は私達の暮らしに欠かせない満足を届けてくれるトラックドライバーでしょうか。
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