農園だよりDiary

2024年6

2024.06.05
 皆さん今日は。

 阿蘇では初夏の風が吹きわたり、清々しい毎日です。我が家の田植えも先月13日から15日にかけて予定通り済ますことが出来ました。植え付けてしまえばあとは苗の生命力でどうにかなるものです。昨年までは放した合鴨ヒナが田んぼの外に出ないように、また外敵に襲われないよう周囲に網と電線を張り、空から襲ってくるカラス対策のテグスを密に張り、それぞれの田んぼにヒナの為の小屋を作り、それを14枚の田んぼ、面積5haにしていたので毎日大変な日々でした。やっと準備が出来上がるのが6月10日頃。稲も育ち、ヒナが活躍しても踏み倒されないくらいに丈夫になった頃ヒナを放すと、発芽したばかりのヒエは踏み倒してしまうのですが、それ以前に大きくなったヒエには力が及びません。最終的には人力による草取りです。有機米栽培は30歳の頃から初めて今年67歳になりますので随分長くやってきたものです。弊社メンバー3名の中で私が最年少なのでこの先何年続けられるかがここ数年のメンバー共通の心配だったのですが、救世主が現れました。昨年の今頃の会報でもご紹介しましたように乗用除草機を購入しこの機械で1回草取りをした後、鴨を放す。又は機械で2回草取りするという試行をしたところ機械で2回草取りでも雑草退治が出来ることが分かりました。最終的には人力による草取りをしなければならないのですが、大変な労力のいる網張と毎日朝夕の鴨の管理、田んぼから上げた後の肥育と肉にする処理費を思うと非常に負担が軽くなりました。この方法ならまだまだ続けられそうです。合鴨がいないので米袋の「合鴨農法で育てた美味しいお米」の表示も変えなければなりませんが、今までと変わらず有機肥料を使い、除草剤は使わず合鴨が土をかき回すように機械でかき回して雑草退治をします。これまでと変わるのは合鴨が田んぼの生き物を食べていたのに対して、これからはそれを食べる者がいなくなると言う事です。田んぼには沢山の生き物がいます。人間の勝手な分類法では益虫と害虫ですが合鴨はそれら全てを食べます。害虫密度も益虫密度も下がるので害虫被害は起きません。それに対して、これからは生き物の生育密度が上がり、いろんな種類の生き物のバランスによって害虫といわれる虫の行き過ぎた増加を防ぐことにより害虫被害を防ぐことになります。化学肥料は生産量増加とともに害虫による被害増加という側面もありました。有機栽培法は化学肥料ではなく、効果が緩やかな自然由来の肥料を使うのでそもそも虫の発生も緩やかです。

 話は変わりますが、今国会で農政の憲法とも言われる改正農業基本法が可決されました。その中には、これから農業者がどんどん減少していく中で無人運転機械やドローンを普及させ食料生産を維持しようというものも含まれています。これは基本的にはデータに基づいた、使い勝手のいい化学肥料と除草剤を使っての生産の奨励です。これまでの農家が田んぼの中に入り、目で見て雑草を見分け、手で取るような面倒くさいアナログ作業ではありません。私達、有機栽培農家はこれに対してもっと仲間を増やし生産量を上げ、対向したいのですが世の中の大多数の人は有機農産物に興味がないのが実情です。作っても労力に見合う販売は出来ません。

 また「食料供給困難事態対策法」というのも審議されています。最近のウクライナ侵攻、円安によって海外に頼っていた食料や肥料が輸入困難な事態を経験しました。これから国際情勢、気候変動により食料不足の事態が起きたとき、国は農業者に食料増産を指示し、従わない者には罰金を科すというものです。もちろん食料は国の統制下におかれ、今までのように皆さんのお手許に直接お届けする事など出来なくなるでしょう。国は現在、市場原理による流通を進めていて結果として価格安、農家減少を招いています。平時には競争力だの自分の力で何とかやれなどと言っておきながら、低い食料自給率は放置。有事に輸入が途絶えたら農家の責任にして、刑罰の一つである罰金とは理不尽極まりない事です。
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