農園だよりDiary

2024年7

2024.07.10
 皆さんこんにちは。

 梅雨に入り先月末は毎日雨の日が続き、阿蘇でも大雨警報が発せられ、防災無線が鳴り響く日が何日もありました。一転して7月になると雨が降らなくなり、蒸し暑い日が続いています。雨が降れば外の仕事が出来ないとか、ジメジメして鬱陶しい、晴れれば暑い。人とは勝手なものですが、その季節にはその事象、降るべき時に降るべき雨が降らないと田んぼの水が無くて困っている所もあるようです。田んぼにとって梅雨の雨はまさに慈雨です。阿蘇は広大な原野があり、そこに降った雨水は地下水となり、阿蘇カルデラの至る所から湧き出しています。昭和の時代から国営圃場整備事業が進められ、真四角の田んぼへの区画整理と全ての田んぼに農道と農業用水が供給できるよう用水路が張り巡らされて効率的に農作業が出来るようになりました。日本では弥生時代から稲作が始まり、長い歳月をかけて米が作り続けられて来ました。米は日本の風土に合った農作物です。小麦は雨が少ない乾燥の土地に育ちます。毎年小麦を作ると連作障害と言われる生育不良が起こるので、トウモロコシ、大豆など違った作物を挟んで2年か3年ごとに栽培しなければなりません。ところが米は田んぼに水を溜めて栽培するので毎年土が更新され連作障害が起きません。また水が最も必要な時期に梅雨という自然現象があり、夏の暑い時期に育ち、秋の乾いた晴天が続く頃に稲刈り。なんという素晴らしい作物をご先祖様は作り始めてくれたのだろうと感謝の言葉しかありません。ところが日本人はパンを食べるようになり米はあまり必要とされなくなってしまいました。阿蘇でも田んぼの半分は穂が出たらすぐに刈り取って藁ごと牛の餌にする飼料稲が植え付けられています。牛の餌作りでは生産意欲がないのか、朝夕の田んぼの水管理をしない人が多くなり、用水路の上流で水口を開けっぱなしにして無駄使いし、下流では水不足になるのが困った問題です。「我田引水」は自分の田んぼの米がより多くとれる様、自分の田んぼに水が引き込む事ですが飼料稲には収量の基準がないのでただの注意欠如のようです。田んぼの水温は昼間は暖かいのですが、夜間は冷えて、用水路の水より冷たくなります。夜間に水を入れることで少しでも稲の生育が良くなるように夕方水を入れ、朝止めます。我が家は上流の田んぼ、下流の田んぼ、いろんな条件のところがありますが下流の田んぼでは昼間でも入れます。とにかく、水がないと草が生え稲は育ちません。

 そんな阿蘇の豊かな自然、豊かな水の環境の中で毎日田んぼに入り、米作りに向き合えることは幸せな事です。
今の時期は、田の草取りをしています。見渡す限りの広い田園の中、居るのは私だけ。除草剤全盛の時代、田んぼの中に入って草取りをする人はいません。広大な空間を独り占めです。昨年までは合鴨が田んぼの中を泳ぎまわり草取りに頑張ってくれました。今年は乗用除草機での草取りです。合鴨は田んぼの網で囲われた内側の隅々まで泳ぎましたが機械はそういうわけにはいきません。畦周りや四隅など届かない所はそのままでもいいのですが、また収量には大差ないのですが、そういう訳にはいかないのです。昨年までも合鴨を入れながら田んぼの中には稗が生え、放置して楽をすると種が落ちて来年の苦労の種をまいているようなものなので手で取っていました。畦周りも綺麗にしておくことが継続の基本です。有機農業イコール草ボウボウ。そんなイメージがあるようですが草があれば手で取るのが農家の姿勢です。

 近年コメは作りすぎて値下がりしないように生産調整するする「経済物資」になり、その結果コメ不足、値上がりが起きています。私は「福利物資」だと思っています。弊社では、これまで皆様方から買い支えて頂いたおかげで私たちは毎年農業を続けることができました。これから先、何が起きるか分からない時代になりましたが皆様方との繋がりは大切にしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
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