農園だよりDiary

2024年9

2024.09.11
 皆さん今日は。

 まだまだ残暑が続きますが、如何お過ごしですか。今年の夏の暑さは本当に体に堪えましたね。作物にとってもこの暑さは堪えたようです。私のトマトは有機栽培なので農薬、化学肥料不使用、交配はマルハナバチにお任せなのですが、8月に入り花は満開、蜂は元気なのに蜂が花にとまらないのです。トマトの花の花粉は高温に永く曝されると活性を失います。活性を失った花粉には蜂は魅了を感じないのでしょう。なので花にとまらなくて受粉が行われず、結果として実を結ばないので、9月になり収穫は休みです。一般に出回っているトマトは植物成長調整剤という薬品をかけてオシベ、メシベの関係なく実を結ばせるので高温の中でも皆さんの食卓に並べる事が出来ています。高温対策は例年通り、ビニールハウスの解放できる所は完全開放し、水も十分に与え、出来る事は徹底していたのですが自然の前では人の力は無力ですね。それでも何か対策をしないとトマトが育たないので、来年は日よけシートを張って温度が下がるようにしようと、もう計画しています。

 地球沸騰の時代と言われています。作物も生育限界温度があり、稲の生育北限と言われていた北海道では数年に一度冷害に見舞われると言われていたのが、今では品種改良効果もあり生育最適地になりました。日本全体では将来、高温の為、稲が育たなくなり日本人の国民食は芋になると農水省は予測していますが、ちょっと考えられない話です。生産現場の実感として、以前コメ余りの時代、米の代わりに大豆作を国は推奨しました。大豆は乾いた畑の作物です。水田は水が地下浸透しないよう、また降った雨水が外に漏れないように出来ています。畑と作物のミスマッチなので農家は畑の中に排水溝を何本も深く作りました。翌年の春、地域総出の用水路、排水路掃除の時、大豆畑の下の排水路には畑から流れてきた土が分厚く堆積していました。何年も大豆作が推奨されたので何年も皆で大変な苦労をして掃除をしました。雨が多い日本。稲が育たず水田が芋畑になると芋も乾いた畑が好きなので畑は雨水で削られ、流れ出た土で日本各地の清らかな流れの河川は土が堆積し泥水になり、故郷の風景は変わったものになることでしょう。

 この暑さの中でも稲は順調に育ちました。この間の台風10号の風で倒れてしまいましたが実の充実には問題はないようです。稲は中国雲南省あたりが原産地。暖かい所が好きな植物なので高冷地阿蘇の暑さはまだ許容範囲のようです。いよいよ9月7日から稲刈りを始めました。強い日差し、エンジンの熱、埃、この環境の中でのコンバイン運転はさすがに堪えますがそれに増す収穫の喜びがあります。今年はそれに加え米不足の中、在庫はすべて8月中旬に売り尽くし、皆様に間違いなくお届けする新米確保が最も気がかりな時の稲刈りなので格別な気持ちがあります。作柄は好天に見舞われ良い米が出来ているようです。

 今年は全国的に豊作のようなので、今の米不足はだんだん解消されることでしょう。今年が豊作で良かったですね。全国の米の作付計画は生産者団体が行っています。生産者は米が余ると値崩れするので消費量ぎりぎりの生産しかしません。ところが、昨年産の米は品質が悪く、精米にした特の歩留まりが悪い事が判明し、米不足になることは昨年の秋の時点ですでに予測されていました。しかし国は何もせず、自分たちの政治資金問題に明け暮れ、国民の食料は海外から買えば良いというスタンスでした。今年の作柄が悪くて、もし大規模災害が発生したらどうなっていたことでしょう。備蓄米は国民が1か月半食べる分しかありません。

 「自助、共助、公助」。世間に出回っている言葉ですが、「自助」無くして「共助」はありません。「天は自ら助くるものを助く」。自分の食卓の確保は自分でやる事をお勧めします。その反面、私達生産者は皆様方の食卓を預かっているという責任をあらためて自覚しなければなりません。
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