農園だよりDiary

2024年10

2024.10.09
 皆さん今日は。

 毎日暑い日が続き、今年の秋は来るのかなと思っていたら、やはり秋は来ました。高冷地の阿蘇では夜に窓を開けて寝る事は出来なくなりました。平年なら毛布1枚では過ごせないのですが、まだ大丈夫です。暑いのですが季節は心配しなくても移っていくものですね。

 今年の猛暑の中で畑はカラカラに乾燥し秋野菜は不作です。田んぼは水があるとはいえ、照りつける強い日差しと高温の中で育つ稲を毎日見ていると、どんな米が出来るのか心配していました。夏の早い時期から全国的に「カメムシ」の異常発生による注意報が出され、殺虫剤の使用が推奨されました。東北のサクランボ産地ではカメムシがサクランボの実にとまり、口から針を出して果汁を吸います。すると実はブヨブヨになり落ちてしまうのだそうです。米の場合、穂が出ると一気に籾にデンプンが送られ膨らみますが、まだ柔らかい時期に、やはり口から針を出し、中のデンプンを吸い取ります。すると写真のように米に黒い斑点が残り、白米にしても取れません。白米のご飯に黒いのがあるのはカメムシの被害に遭った米粒です。また、黒い斑点はないけれど全体的に茶色の米粒もあります。今年の高温の影響です。弊社ではこういう被害粒は「色彩選別機」に掛けて取り除いています。1時間当たり600㎏の早さで籾摺り(籾から玄米を取り出す作業)をしますが、機械に内蔵されたカメラが1列に並んだ玄米粒を見ていて、異常な玄米を感知すると圧縮空気で弾き出します。異常米の混入度合いによりますが1秒間に10粒程度除去されます。量的には玄米10㎏当たり30g程度で、ごく少量なのですが、しかし白米にしたときには目立つのです。高価な機械ですが皆様に直接お届けするための必須アイテムです。この一手間を掛けた米は品質上々。今年も良いお米が出来ました。

 9月には「敬老の日」の祝日がありました。文字通り年長者を敬う日です。近年は全国的に少子高齢化と言われ、私の区、14戸の中でも75歳以上の人が11人います。今後も毎年増え、そうこうすると私も高齢者の仲間入りをしなければならなくなります。以前は公民館で75歳以上の高齢の人をお招きして細やかな宴を催していたのですがコロナの時代になり、集まるのはよして幕ノ内弁当をお配りする形になりました。しかしコロナも収束し、まだ現役バリバリ、いつも皆で飲み会をしている人に弁当お配りでは寂しいな。これからほとんどの人が75歳になるならと、10月13日の年に1度の村祭りの日に高齢者と各戸夫婦で集まり盛大にお祝いしようという運びになりました。楽しみです。皆で集まって活動できるのは健康な証です。

 以前テレビで健康寿命を延ばす研究に世界の大富豪がお金を出しますというのがあっていました。私の住む「山田地区」は400戸。阿蘇市の中でも高齢化率が高く、将来の免許返納も考えて、昨年市が「コミュニティーバス」の実証試験をしました。毎日30人の利用が採算ベースなのに1日に1人や2人。利用者は限られていて7人程度。年度末の事業検証会では「実施地区を間違えた」。「地区の皆さんが元気なのに驚いた」。などの意見が出ました。高齢者と言ってもみんな現役農業者。軽トラックは日常の足。トラクターに乗らなければ仕事が出来ないので簡単に免許返納は出来ません。農家は「百姓」、百の職種の仕事が出来ないと成り立たないと言われてきました。頭を使い、体も使い、ぼけている暇などないのです。年間農作業計画、段取り、資材調達、すべてを自分で行い、その日の仕事を無理しない程度にやるから、いつまでも健康です。健康は化学薬品や細胞コントロールで得られるものではなく、日々の積み重ねによるものです。そして最も大事なのは『生きがい』です。行く所がある。する事がある。会いたい人がいる。目的が精神を若返らせ、健康な体と相まって健康寿命に繋がるのではないでしょうか。そんな目的を持った農業者が日本の食糧を支えています。
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