農園だよりDiary

2024年11

2024.11.06
 皆さん今日は。

 「あそ有機農園だより」も今月で360号になりました。弊社は1993年、「農事組合 あそ有機生産組合」として生産者10名で発足、1997年「有限会社 あそ有機農園」に改組、現在に至っています。その間それぞれの事情により生産者の変動があり、現在3名で活動しています。農園だよりは農事組合設立当初から発行されていました。最初の執筆者はまだパソコンが普及してしなかった時代なので、ガリ版印刷で作成していました。1997年の改組から私が3代目として担当し27年になります。始めの頃はパソコンも上手く使えなくて、デジタルカメラのデータを取り込むのに何時間もかかり、文章を考え、入力するのも自在に出来なくて写真を何枚も貼り付けコメントをちょっと添えて済ましていました。しかし去年の春と今年の春は違う話題を書かないとお客様は飽きてしまうだろうなと思い、日々農作業の合間にネタ探しをしました。携帯電話で写真が撮れるようになると毎日が撮影会です。ちょっと目についたことを撮り、パソコンに収め、会報作成の時に内容に合った写真を取り出して使います。日々の農家暮らしでは当り前の事でも農業を知らない人にとっては新情報かなとか、農家の思いとか、色んな情報をかき集めて書いて30年。稚拙な会報ですが今後とも宜しくお願いします。

 今月の写真は11月1日の田んぼの様子です。例年なら「役犬原 霜神社」の「火焚き神事満願」の10月20日頃には初霜が降りるのですが今年はまだです。それどころか稲刈り後も高温が続き、稲の切株から「ひこばえ」が伸びて穂が出て実が充実しています。本当に食べ物がなくなったなら収穫すれば沢山の人を助ける事が出来るのにと思っていますが、それは農家の妄想でしょうね。本来なら秋晴れが続き田んぼも乾いてトラクターで耕して切り落とした藁や稲株を土と混ぜて腐らせるのですが、今年は天候不順でまだその作業が出来ていません。季節外れの台風21号が通り過ぎ、田んぼが乾くまで作業はお預けです。

 全国の米収穫も終わり、令和の米騒動も落ち着き、店頭にも米が並ぶようになりました。しかし値段が下がらない。米は高くて買わない。米の値上がりで消費者物価指数が上がった。つい数か月前まで米が無くて、高くてもいいから売ってくれと探し回った人が沢山いたのに、のど元を過ぎれば世の中現金なものです。衆議院選挙がありましたが各党の政策の中で農業、食料に関する政策順位は下の方でした。全国の農家が減少し、農家の票より非農家の票の重みが増してきた表れでしょう。逆に見るとそれだけ農家の数が減っていると言う事です。先日も取引の東京の米屋さんと電話で話をしました。米の大生産地、新潟の生産者の話。「もう自分の周りは高齢者ばかりであと何年、この地域の米つくりが続くか分からない」のだそうです。「それは阿蘇も同じですよ」と答えたのですが最近の情報交換はこの種の話題が多くて、全国を回っている米屋さんには情報も集まり、危機感を持っておられるようです。

 いま米の他に野菜、卵、肉すべての農畜産物で10年前より生産量が3割減少していて、すべてが高くなっています。円安による燃料、肥料、飼料、運賃、その他すべての資材の高騰もありますが最も根源的なのは生産者の減少です。農業という仕事は自然が相手で自然と接する喜び、収穫の喜び。沢山の喜びはあるのですが自然災害、価格変動など不確実性が高い職業です。子は親の背中を見て育つと言われます。また親が苦労して仕事をしても、それに見合う見返りがないなら親は子には後を継がせたくないでしょう。国は農業者の減少に対してAI技術で対応するそうですが、価格が安くて後継者が出来ないのに高価な無人機で作った農産物の価格はいくらになるのでしょうか。加えて除草剤、化学肥料を使わない有機栽培の技術開発のハードルは更に高いでしょう。その対価を支払うのは消費者の皆さん方です。
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