農園だよりDiary

2025年3

2025.03.05
 皆さん今日は。

 今年は全国的に記録的な積雪が報じられていましたが、皆様のお住まいは如何でしょうか。先月の会報でもお知らせいたしましたように阿蘇でも積雪がありますが、交通の妨げになるほどは降りません。しかし阿蘇山では朝から急に降り出し、午後にはかなりの積雪になっていました。まだまだ春は遠いようです。

 弊社では皆さんのご理解を頂いて、何とか再生産の出来る価格での販売を致しておりますが、最近の報道で御承知の通り、米の品不足で価格が高騰しているようですね。昨年より70%も値上がりしているようです。一部の業者が投機目的で買い占めていると言われていますが米や麦は1年に1度しか収穫できません。足りないからと言って工業製品のように直ぐに増産することは不可能なのです。だから投機の対象になります。
 
 この会報でもお知らせしてきましたように日本の農家数は2020年からの10年間で半分になります。農地も35%減少します。現在、国内で生産される農産物は減少の一途ですが、最近の野菜の値上がりの本当の原因は天候のせいではなく農業者減少です。その中でも野菜販売の収益と米販売の収益は一桁違います。全国の農家は高齢になりリタイヤ、若い人は時給10円のボランティアの様な仕事には就きません。生き残る農家はコメ以外の生産をする農家です。最近、米の値上がりのせいで消費者物価指数が上がっていると言われます。しかし円安、肥料高騰、資材高騰、燃料高騰の中で高いと言われながらも30年前の値段なのです。

 昔、日本には「食糧管理制度」と言うのがありました。1942年。戦時下、政府が食糧を管理するために制定し、生産者にはあまり高くはないけれど安定して暮らしていける価格での買い入れ、消費者に対してはあまり安くはないけれど毎日安定して食べていける価格での供給を国が管理していました。それでも国民がお腹いっぱい食べる量はありませんでした。国は厳格に管理し、現在の生産者と消費者の直接取引は「闇米」と言われ非難されました。今では米、茶碗1杯50円。貧乏人は米を食べる時代になりましたが、ある宰相は「貧乏人は麦を食え」と言いました。ところが国民生活が豊かになり、パン食など食生活が多様化し、米が余るようになりました。古米、古古米、古古古米が巷に出回り、国民のヒンシュクを買うようになり、また在庫管理の国庫赤字負担で1969年、米を農家が作りすぎないよう「減反政策」が始まりました。現在も阿蘇では50%を超える水田に主に牛の餌になる稲が飢えられています。1995年には米の生産、流通を民間に開放し自由で創意工夫あふれる米ビジネスを目標に「食糧管理制度」は廃止されました。

 コメ相場は市場経済にゆだねられました。大阪堂島先物取引所では昨年から米先物も取引されています。品物が減少すれば価格が上がるのが市場経済の基本です。これから農家が少なくなり、米の生産量が減少していき米の価格が上がり、若手農家はコメを作っても生活が出来るんだと思えば少しずつ生産量が増え、価格が下がっていき消費者の皆さんも安心して生活が出来るようになります。ところが国は災害や飢饉の為に備蓄していた米を市場に放出します。品物がなくなり価格が上がるのは1995年の食糧管理制度が廃止されたときに予測されていたことです。せっかく生産拡大の気運が生まれつつあるのに水を差す政策です。

 弊社では約40年、米の有機栽培に取り組んでまいりました。農薬や化学肥料を使わない米つくりに賛同していただいた皆様に支えられ、これまで続けてくることが出来ました。無農薬無化学肥料での生産には沢山の苦労がありますが私達が予見した時代がついにやって来ました。食に関心のある皆さん方が農業についてご理解いただき、自分の食卓をどう守って行くのかという心構えを持っていただくことが生産者の励みになります。
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