皆さんこんにちは。
阿蘇で昨年の梅雨明けは6月28日でした。まだ心も体も準備が出来ないうちに真夏の猛暑になりました。薄い生地のシャツを着て田の草取りをしたので背中が太陽光に焼かれ、汗疹ができ、夜も寝られないほどの大変なことになりました。皮膚科クリニック行ったらドクターから「何をしたらこんな事になりますか」と尋ねられました。あらからちょうど1年。今年は梅雨らしい梅雨です。日々の暮らしではしとしと降るのは嫌ですがその時期らしい天候は仕方ないようです。
稲の生育に水は欠かせないものです。ちょうど一番水が必要な時期に梅雨になります。その雨を受けて田んぼでは稲がすくすく育っています。日本の地形は山脈があり、そこから海岸線まで距離が近い傾斜地です。降った雨は大地を駆け抜けてすぐに海に至りその時、山肌や畑の土も一緒に流してしまいます。先人は等高線状に畦を築き引き入れた水と土とを練り合わせる「代搔き」をして稲の苗を植え付けました。先日、阿蘇では線状降水帯が発生し大雨警報が発令されましたが代搔きして沈殿した土は雨水には流されません。また、大陸で生産される小麦畑では毎年栽培すると小麦が好きな肥料成分は不足し土の肥料成分バランスが壊れ、また小麦の根はその作物特有の成分を土に放出しそれが蓄積することにより起きる「連作障害」により作物が良く育たなくなります。しかし稲作は日本各地に田んぼが作られ、代々の農家が受け継ぎ今日まで作り続けても生産力が衰えることはありません。稲作は日本人の胃袋を満たしたと同時に国土を守ってきた大きな役割がありました。
そんな稲作に関われることは嬉しいことです。先日、田の草取りをしていると近所の先輩農家が水回り(日々の田んぼの水管理)の途中にバイクを止めて話しかけてきました。「歳をとっていつまで出来るか分からないが日々稲が育っていくのを見るのが楽しい」と。名言です。私もぬかるむ田んぼの草を取りながら一日中歩くのが今の仕事なのですから。今年は梅雨らしい曇天とたまには強い雨が降りますが背中を焼く強い太陽光もなく、雨には合羽があり、毎日稲の育ちを見ながら田んぼの中を歩くのも良いものです。稲の苗は20㎝間隔で植えられ、その列は30㎝間隔です。草取りの一行程は5列をカバーします。5列の中の2と3列、3と4列の間に足を入れ、稲株の間や株に密着している稗や色んな雑草を瞬時に見分けて取らなければなりません。先月お便りで紹介しました「乗用除草機」で2回取っているので沢山はないのですが注意して見ないと見落として秋に大変なことになります。一行程で幅1.5m、往復3m。田んぼの長さ100m。今年の作付面積6ha。100m×600mなので長さ100mの田んぼの中を200往復しなければなりません。
最新の稲作技術は化学肥料、除草剤、殺虫剤が基本です。近年、苗作りと田植えをしない「直播」は生産コストが安いということで国は推奨しています。田植えをすることは苗の時に晩霜の害に会わない対策と田植えしたときにこれから発芽する雑草との競争に優位性があるようにするためのものです。田んぼに直に種を蒔くと雑草も一緒に発芽して稲は負けます。しかし稲には害がなく雑草だけを狙い撃ちにする強力な除草剤を何度も撒いて雑草を殺してしまいます。皆さんが生産過程を見たときどう思うでしょうか。しかしそういう栽培法をしないと皆さんの食べるお米が皆さんの手元に届かないという現実は、もうすぐそこにあります。
腰痛にはインナーマッスル強化が大事という情報がありました。私は何年も田んぼのぬかるみを歩き、腰を曲げて田んぼの表面を撫で、草を取ってきたことで知らず知らずのうちにインナーマッスルが付いたのだろうと思います。重労働ですが腰痛はありません。田んぼの神様が雑草を取り綺麗にしている私に微笑んでくれているのだとひとり思っています。