農園だよりDiary

2019年9

2019.09.09
 皆さん、こんにちは。

 9月になり、いよいよ稲の生育の最終段階を迎えました。今年の夏、阿蘇の天候は8月15日の台風10号が九州の東をかすめて通過して以来不順です。例年なら9月上旬、学校の2学期が始まり運動会が有る頃、校長先生を悩ますのが秋雨ですが、今年は8月の内からの「夏雨前線停滞」でした。先月末、全国の米の生産者が集う会が有り参加したのですが西日本の生産者異口同音、悩みは天候でした。特に九州宮崎、高知の8月に収穫が終わる早期米地帯ではかなりの減収だったようです。しかし9月になり、やっと晴れ間が見えるようになりました。

 ここ数年、高冷地の阿蘇でも異常高温の日が続き、米の品質低下が言われてきました。作物は昼間、光合成で生産した糖を夜間は自分の体を養う為に消費します。夜温が高いと生産された糖の多くを消費し、反対に低いと多くを果実に蓄えます。だから昼夜の寒暖差のある高冷地の作物は美味しいと言われる所以です。気温が高かったここ数年、稲の生育速度が速く、秋になると茎や葉が急速に黄色くなっていましたが、今年はゆっくりとした生育で茎や葉も青々としています。雨の続いた日には今年の稲はどうなるのか心配しましたが、稲は天候に合わせ自己調整して生育していたようです。自然の力はすごいですね。気象予報によると今後は天候も回復する様子なので良い収穫が出来るよう天に祈るのみです。

 9月8日。大観峰一帯の原野の、来年春に行われる野焼きの準備で、輪地(防火帯)作りをしました。朝6時半に現場集合、朝の高原の涼しい空気の中、朝露を蹴散らしながら草原に分け入り列になり「刈り払機」で幅6mの輪地を作りました。下界の田んぼの様子を見ながら心地よい汗をかきました。

 外輪山から下界を見下ろすと2500haの田んぼが広がっています。例年だと半分くらいの田んぼの刈取が済んでいるのですが今年はまだコンバインの姿が有りません。
田んぼをよく見ると黄色と緑のモザイク模様になっています。黄色は食用米。緑は茎も葉もすべてを牛の餌にする飼料稲の田んぼです。6月のお便りでも触れましたが国は飼料稲、飼料米に補助金を出して農地の維持と米価の安定を図っています。今、この国では米を食べる人が減り田んぼは荒れ、その反面、肉を食べる人は増え、畜産の飼料の74%を輸入に頼っているのだそうです。その飼料を日本の農地で生産する事は自給率向上につながり農民としては歓迎すべき事です。ところが最近この農地の新たな活用法を挫く問題が起きているようです。それは日米貿易交渉で米国産トウモロコシ275万t(数百億円規模)、通常消費の3か月分を日本が輸入する合意が出来たそうです。そのトウモロコシはバイオエタノール用に生産された物が米国内の政策変更で余剰になり行き場を失い、それを日本が買い取るようです。しかも米国でも農薬使用量が増えている遺伝子組み換え作物として環境団体から指摘を受けている物です。お陰で日本国内の自給率向上と米の需給バランス調整がとん挫の危機にさらされています。日本の農業と米国の農業、どちらが大切なのか高い所にいる人の考えは分かりませんね。

 阿蘇の今年の気象は私が就農して以来、初めて経験するものでした。それが今言われている地球温暖化とどう結びついているのか分かりません。しかし庶民はそれなりに手近にある物で使えるものは使い、巡り巡って我が身にその付けが回ってくることが少ないように暮らしたいものです。
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